- TOP
- 新着情報詳細
従業員の退職金事情について
1.従業員の退職所得課税の改正
令和3年度税制改正により、勤続年数5年以下の従業員の退職金に係る所得税が増税となります。
退職金に係る所得税は、長年の勤労に対する報償的給与という意味合いもあり、税負担が軽くなるように配慮されていました。しかし、今回の改正で退職金から退職所得控除額を控除した残額のうち、300万円を超える部分について2分の1を乗じずに退職所得が計算されることとなりました。
この改正は、令和4年以降に支払われる退職金について適用されます。
2.改正前後の税額の違い
具体的な金額を用いて、改正前後の所得税を比較してみます。ここでは、従業員が5年で退職し、1000万円の退職金が支払われたものとして計算します。
◆改正前
◆改正後
このように、改正後では税額が2倍以上に跳ね上がります。住民税も高額になるため注意が必要です。
ただ、中小企業において勤続年数5年以下の従業員に支給する退職金が、退職所得控除額後で300万円を超過するケースは非常に稀かもしれません。
実務的にはあまり影響はないかもしれませんが、これを機に退職金制度について考えてみたいと思います。
3.規模別の退職金制度
そもそも退職金には人材の確保という目的がありました。そのため、勤続年数が長いほど増える傾向があります。逆に、62.3%の企業が勤続3年以下の自己都合退職では支給しないとしています(中小企業の賃金・退職金事情-東京都産業労働局)。企業側としては長期勤務を期待していることがわかります。
また、厚生労働省が30人以上の社員がいる企業を対象にした調査によると、19.5%で退職金制度がありません(平成30年調査)
全体としては、大企業ほど退職金制度が整備されている傾向があります。退職金は企業にとっては大きなコストとなるため、小規模企業では制度を設けられないという事情もあると思われます。
4.変化する退職金制度
退職金制度は、企業の意向や経営状況に合わせて自由に策定することができます。あったほうが「安定している、福利厚生がよい」という印象を与え、求職者が企業選びの基準とする確率も高いでしょう。
とはいえ、支払原資を社内準備できる大企業とは違い、小規模企業には負担が大きいものです。
昨今では人の流動が激しくなり、勤続年数も短くなってきています。
終身雇用・年功序列を前提とした「退職一時金」では企業と従業員のメリットが
小さいと考え、退職金制度の見直しや廃止を進める企業が増えていくのではないかと思われます。
企業負担をできるだけ少なくし、従来の退職金制度の代わりとすることができる中小企業退職金共済や養老保険もあります。
人材確保や退職金の税負担、支払原資など問題は色々ありますが、自社の特徴などを鑑みながら、退職金制度についての見直しをしてみてはいかがでしょうか。